WORKS

WORK #32

ファミーユ田ノ上

都市の中にありながら、葬儀という行為は極めて内面的で、静かな時間を必要とする。
本計画では、その内面へと意識を導くための空間の連なりを建築的に構成した。
外観は周辺環境に対して過度に主張せず、水平性を強調した抑制的なボリュームとすることで、街並みに静かに溶け込む佇まいとした。一方で、エントランスにおいては軒下空間と木質の素材により、人をやわらかく迎え入れる「緩衝領域」を設けている。
内部に入ると、光は直接的に空間を満たすのではなく、間接光や陰影として現れるようコントロールされている。天井に連続する梁のリズムや、素材の切り替えによる奥行きの演出が、視線と身体の移動をゆるやかに誘導し、外界から切り離された静謐な環境へと導いていく。
式場は過度な装飾を排し、光と素材によって場の質を整える構成とした。壁面の陰影や天井の光のラインが空間の重心を形成し、参列者の意識を自然と中心へと集約させる。
この建築は、機能としての葬儀場であると同時に、「外から内へ」「社会から個へ」と意識を移行させる装置である。
人の心の動きに寄り添いながら、静かに内面へと導く空間の在り方を目指した。

家族葬のファミーユ田ノ上ホール
■建築地:岡山県倉敷市田ノ上
■用途:葬儀場
■構造:木造平屋建て
■延床面積:235.99㎡
■竣工:2026年3月